臆病な私でも恋はできるのか。




後ろで私たちの様子を見ていた父が、一歩近づきお母さんにハグをした。


「ただいま」


「おかえりなさい」



長い間海外にいる父はさらりと恥ずかしげもなくお母さんを抱きしめ、おでこにキスをした。



私が知らなかっただけでお父さんが帰ってくるたびこうだったのかもしれない。



「さおちゃん、帰ってきたら会いたかった人がもう一人居るんじゃないの?」


「えっ…?いいの?」



せっかく帰ってきたのだ。お母さんは私を一日中離さないものだと思っていた。



「これからは毎日会えるんでしょう。一番が私だったから今日1日は彰人くんにあげる」


お母さんとお父さんの顔を交互にみる。


すると、大きな荷物の方をお父さんがすっと持ち上げた。



「行っておいで」



「お父さん!ありがとう」



私は軽い荷物とお花…それに彰人くんへのプレゼントを持ち、空港を飛び出した。
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