銀髪と呪眼と赤い外套~夢の競演特別編~
ともあれ、戦いは終わった。

ホムンクルスやら竜やらエクソシストやら、大概の事には慣れてきた俺だけど、今回ばかりはちょっと驚きを禁じえない。

戦乙女と紅。

異世界の戦乱を平定したという、最強の英雄か…。

戦いを終え、闇の薄まり始めた空を眺める二人は、この上なく様になっていた。

この二人はきっと、遠く異世界の平原でも、こんな風に夜明け前の空を眺めていたんだろう。

累々たる敵兵の屍の中、誇りと、矜持と、それと同じだけの命を奪った事に対する後悔の念を胸に秘めて…。

「さてと」

メグが長い髪を片手で払った。

「黄昏てるとこ悪いけど、私にはもう一仕事残ってるのよね」

「あ…」

俺は思わず声を上げる。

そうだ。

乙女と紅はこの世界の人間じゃない。

戦いが終わった以上、長居は無用なのだ。

「ま、召喚するよりは還す方が楽かな…なんか話しとく事、ある?」

メグが言うと。

「ない」

紅があっさりと返答した。

こいつは空気を読むとか、雰囲気を味わうとか、そういう感覚は一切持ち合わせていないらしい。

「用が済んだら早々に撤収だ。四門メグ、さっさとはじめろ」

「…えっらそーに…」

そんな事を言いつつも、メグはどこか楽しげだった。

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