死神のお仕事
「…でも、今のアラタさんは生きてるけど、アラタさんの命を生きてるとは思えません…」
そんなのって、無いと思う。そんな悲しい事って…辛い事って、無いと思う。
アラタさんはその想いに何の疑問も抱いていない。 きっと自分が今どんな目をしているのかも分かっていない。
あんなに優しい人なのに…あんなに優しい人だから、悲しい。悲しいと、思ってしまう。
アラタさんは今この時もその人の事を想っているのだろう。そしてその人が居なくなったその時、彼の命も終えるのだろう。
「それが良い事なのか分かりません。分からない、というか…そんなのって、その…」
「可哀想か?」
「…え?」
「アラタが可哀想だって、おまえはそう言いたいのか」
先程までこちらに見向きもしなかったサエキさんの視線が、鋭く、私に向けられていた。
「…えっと、」
「おまえはアラタにどこまで聞いた?」
「どこまでって…死神になる事で救われたって、でもサエキさんに教えて貰ったって…」
「で?」
「…で?」
「そのアラタの想いのきっかけとかやるべき事とか、相手が誰なのかとか聞いたのか?」