死神のお仕事
「…聞いてません」
「全部聞いた訳じゃ無いのか」
「…はい」
「なんで?」
「え?」
「なんで聞かなかった?」
「それは…流石に、そんな所聞いてもいいのかって…」
「でもおまえは今本人の居ない所でそれを知ろうとしていて、勝手に解釈して確信して、哀れんでまでいる」
「…だって、それは…」
「本人と向き合う気もないクセに、知った気になって一方的にアラタに哀れんだ目を向けるのは違う。アラタの生き方をおまえが否定するのは違う」
何も分からないクセにと、暗に言い渡されたような気がした。ーー 妄想で語るな、以前サエキさんに言われた言葉が蘇る。
…確かに、私はアラタさんから全てを聞いた訳でも、アラタさんと同じ立場で同じ経験をした訳でも無い。そんな私に分かる訳が無い。
悲しいとか辛いとか、そう思う気持ちだって結局は可哀想と思う心からきていたのも分かってる。可哀想と、私は彼を哀れんでいた。それをサエキさんはアラタさんの生き方を否定する事だと言う。
ーー傲慢な態度。
分かってる。分かっているけれど…
「でも、そんなアラタさんを知ってしまったら知らない振りなんて出来なくて…」
「知らない振りなんてしなくてもいいだろ、ただ否定的な感情で首を突っ込むなって事。アラタはそれで幸せなんだから」
「…幸せ?」