死神のお仕事
ーー真っ暗な瞳。それは死神の思考回路。
「望む死までの道程が目に見えている事は、死神にとって一番の喜びだ」
何故なら死神が一番望んでいるものは希望に満ちた死なのだからとーーサエキさんは、言った。
望んだ通りの、完璧な死。
…あぁ、なるほど。
だからかと、私には全てが理解出来た。
私の言葉にサエキさんが一切納得しないのも、アラタさんの瞳の光が無くなっていったのも、全ての先にあるものが“理想の死”だったからだ。
だからアラタさんは幸せ。アラタさんはそれを自分の為に望んでいる。それが私に分からなかっただけ、ただ、それだけ。
「…わ、かりました」
納得したのと同時に、なんだか身体の力が抜けた。私は一体、何にそんなにムキになっていたのだろう。
「言っただろ?人間は自分を基準に捉えるのが好きな種族だって。生に縋って、生きる意味に重きを置く…自分の命に拘るのが人間。やっぱり、おまえは人間だよな」
あぁ、本当に。私は人間だ。そしてーー
「あなた達は、死神なんですね」
分かった。理解した。納得した。受け入れた。そしたら…なんだろう、安堵した。
彼らの世界が、私の踏みいれた世界が、ようやく見えた気がした。