死神のお仕事


「そう。上から下までゆっくり…上手だね」


スキャンされていく過程が数値と画像で表される。不思議。これで実際の魂のデータを取り込んで、遠距離から本体に指示を出せるようになるなんて。

魂は実在しているのだろうか。目の前にあるこれは本当に魂なのだろうか。これが本当に液体になって私の身体の中に巡っていったのだろうか。これは本当に…食べられるのだろうか。


食べる…食べる。


私はこれを、食べる事が出来る?


食べ、られる?


ゴクリと、自然と口内で溢れ出した唾液を飲み込むと、私は魂の方へと向けていた端末の先を下ろしていた。


…どんな味がするのだろう。死神には味覚が無いと言っていたけれど、私には人間の部分もあるのだから、きっと味がするはず。こんな良い香り、人間の時には嗅いだ事が無かった。死神になったから分かる香りに、人間だから分かる味。


私が、私が食べるべきなんじゃない?

私が食べてあげる方が、魂の為になるんじゃない?


そう、私が食べればきっと…食べるべきなんだよ、私の為じゃなくて魂の為なのだから。一口、まずは一口…それで、


「あかりちゃん」

< 120 / 265 >

この作品をシェア

pagetop