死神のお仕事


「! …あれ?わ、たし…」


気づいたら、隣にアラタさんの姿が無くなっていて、その代わりのようにすぐ目の前には浮かぶ魂があった。手を伸ばせば届くその距離に、私は息を呑む。


それは、フラフラ揺れるような動きをピタリと止めて、ジッと待っていた。私の手が伸ばされるのを、自分が私に食べられるのを、軽くなった本体で上へと昇っていく瞬間を。


期待されている。意思がある。


魂には…少なくとも今目の前の魂には、意思がある。


「あっ…の、えっと…」


そう認識した瞬間、急にゾッとした。怖くなった。ジッと私の次の行動を待っていると思ったら、期待させてしまった事が怖かった。だって私は、食べれない。食べたくない。


そう、私には食べられない。


我に帰った意識からジリジリと足を引いていくうちに、トンッと何かにぶつかった。驚いて振り返るとそこにはアラタさんが居て、その両手でそっと私の肩を支えてくれる。


「おかえり。行こっか」

「え…?あ、えっと…」


行く…?あ、そうか。この後時間貰えるかって、さっき言われて…


「…でも…」

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