死神のお仕事
チラリと、視線を動かした。魂はまだピタリと動きを止めたまま、こちらの様子を窺うようにジッとその場に浮かんでいる。
「今出来る事は二択だよ」
「…え?」
「食べるか食べないか」
「あ…」
「食べないなら行こう。これ以上期待させるとしつこくなる」
そう、ニッコリと微笑みながら言うアラタさん。その表情はいつも通り穏やかなものだけど…その瞳に、情は無かった。
これ以上させると、なんて言うのだから、もうすでに目の前の魂が期待してしまってるのは分かっているはずなのだ。でも彼はそれに対して何かするつもりも、してあげるつもりもないらしい。
「大丈夫。今食べなくたってどうせ行く先は一緒だから」
その通りだ。その通りだし、結局食べられない私には何もしてあげられないのだから、何をどうしたってこれしか選択肢は無い。無いんだけど…
「…ごめんなさい」
せめて、せめての罪滅ぼし。罪悪感から逃げようとする言葉を口にしないと気が済まない私は、やっぱり自分本位な人間だった。