死神のお仕事
食べてあげればいい、食べられるはずなんだから。でも出来ない。だから謝る。期待させてごめんなさい、応えられなくてごめんなさいと謝る。そんな自分が…なんだか汚い。
人間は汚い。それに比べて死神は、どこまでもさっぱりとしていて清々しい…とても、綺麗。
死神は綺麗で高潔な存在なのだと、そうとすら感じる。だからその分だけ私は私が…私の人間の部分が…あぁ、ダメだ。
そんなだからいけない。食べようとしてたクセに、期待させてしまったクセに、死神のクセに食べてあげる事すら出来なかったそれを人間の部分のせいにして逃げてる。ただ私自身の意識が低かっただけなのに。責任を負えなかっただけなのに。
ーーどっちでも無い私が、一番汚い。
「こっちだよ」と、私を導くアラタさんに隠れるようにして私は歩いた。この世の中で一番汚い存在な気がして、人の目につくのが恥ずかしかった。変な目で見られてるような気がした。そして何より魂から見つからないようにと、そう願った。
先を行く彼は途中で何処かに寄るでも無く、ただただ道を歩いてゆく。そんな彼の背中だけを見て、私も歩みを進めていった。置いて行かれない距離で、邪魔にならない間隔で。
「ーー着いたよ」
そう声をかけられた瞬間、久しぶりに聞いた声のような気がして驚いてしまった。そして気づいたのは、今の今までずっと会話が無かったのだという事。無言でただひたすらに私はついて歩いて、アラタさんからかけられる言葉も一つも無かったのだという事。