死神のお仕事


「彼女は死神で、僕は人間だったんだよ」と、アラタさんは、ニッコリと微笑みながら私に告げる。

それでようやく意図が分かった。アラタさんは今から私に自分の過去をーー大切にしてきた部分を、見せてくれるつもりなのだと。


「…僕は、生きてる時から死神が見えたんだ。ほら、死に近い人間程死神が見え易くなるってやつ、それに当て嵌まってたんだよね」

「…病気か何かだったんですか?」

「ううん、そうじゃないんだけど…ちょっと家庭環境がね。怪我が絶えなくていつ死んでも可笑しくない状況だったから、だからカズサが来たんだと思う」

「?」

「僕が死んだら魂を回収しなきゃならないでしょ?本人に言われた訳じゃないけど、彼女は毎回僕が死んでるか確認しにきてたんだと思う。それが彼女の仕事だし、それくらい毎日が酷い有様だったから」


…死神が、死んでいるか確認しに来る程の家庭環境ーー


「……虐待、ですか?」

「そうだね。なんでこの人達は僕を産んだんだろうって、不思議だった。痛みと恐怖以外に両親から貰ったものなんて、何も無かったから」

「……」


それを想像してみる事。それすら、私には出来なかった。

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