死神のお仕事
両親しか知らず、その両親から死と隣り合わせになる程の虐待を受けるしか無い毎日。アラタさんには彼女しか居なかった。自分を見てくれて、自分の存在を否定しなかったのは、彼女しか…
「でもね、始めこそ抗ったけど、何度も死にそうな目に会う内に死を受け入れるようになったんだ。ここに居る事自体が間違いだったんだって、辛さから逃げるというよりも悟ったって感じで。それはその内確信に変わっていって…そしたら、カズサに言われた」
「何をですか?」
「いらないのって」
「え?」
「命、いらないのって」
「……」
「勿体無いって言うんだ。人間は必然的に死が訪れるのに、その瞬間を待たずに終わらせるのは勿体無いって。折角運命的な死がそこまで来てるんだし、もう少しその命を生きてみたらって」
「…そ、それは、なんていうか…」
「うん、死神的意見だよね。運命的な死、なんて言われてもよく分からなかったよ。もう死ぬならいつ死んでも一緒なのにって」
「じゃあ、アラタさんは…」
「うん。命より意味が欲しいって言った。意味が欲しかったって。意味が無いならこの命はいらないって」
「……」
「そしたらカズサは言うんだ、自分は僕の命が羨ましいって。人間の人生が羨ましいって。僕の命が欲しいって…カズサは言ってくれたんだ。こんな僕の命を欲しがってくれた」