死神のお仕事
理解出来ないものを全て取り払うと、生きたいという素直な想いだけが残った。そしてそれを口にした瞬間、生きなければ、生きるべきだと、何処からか力がむくむくと湧いてきて、感情の後押しをする。
するとどうだろう。不思議な事に真っ暗に様変わりした世界から黒がだんだんと引き始める。真っ黒な辺りがだんだんと淡く、明るく、白らんでいく。
「…そうなると、どうなります?」
ーー気持ちが前を向いた先。
そこはもう、一面白い世界。
真っ白な元の世界が広がっていた。
すると何やら先に黒いものが目に入る。元に戻った世界だけど、それはさっきまでは無かったはずのもの。遠くてよく分からないけれど、どうやらポツリと佇む人影のように私には感じた。
「死神になるしかない」
「!」
突如、今までとは違い妙に近くで聞こえてきたその声。…瞬きをした瞬間だろうか。それ程までに一瞬にして、目の前に人が現れた。人が佇んでいたのだ。
無意識にさっきの人影を確認すると、もうそこには無くなっている。近くなった声といい、どうやらあの人影もさっきから話していたのも目の前のこの人で間違いないようだ。