死神のお仕事


ーー知ってる?死神には寿命が無いんだ。身体を維持出来ない程の怪我を負うか、飢えるかの二つだけ。ただ待っていても死は訪れないんだよ、自分の足でそこへ向かわないといけないんだ。だから死神は死を欲するようになる。死が必ず訪れる人間の人生を羨ましく思う…って、後から分かった事なんだけどねーーそう、アラタさんは私に教えてくれた。それで私はようやく、理解出来ないでいた部分のピースがはまっていくのが分かった。


「それで、アラタさんは…」

「うん、だったらあげるよって言った。君の好きなように使って欲しいって言ったら、カズサは驚いて…ははっ、すごい慌ててたっけなぁ」


懐かしい光景を思い浮かべて、アラタさんは嬉しそうに、楽しそうに笑った。そして温かな瞳を未だ気づかずに歩き続ける彼女の方へと向ける。


「それから魂の交換の話を聞いて、僕のまだ使い切ってない魂があれば人間として一からカズサはやり直せるって事を知って、それがカズサのずっと願って来たけど諦めていた事だって分かって…」

「…それで、交換した」

「そう。僕とカズサの魂を交換した」


だから今、彼女は人間でアラタさんは死神になった。…つまり、


「アラタさんの貰った意味って、カズサさんに人間としての命をあげるって事ですか?」

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