死神のお仕事
カズサさんと魂を交換したアラタさんは命の代わりに意味を貰った。そして、終えた。人間としての生を終え、人間としての命を失った。
「…求めて貰えた事、それが嬉しかった。どうせ死ぬしかない僕の命が、何の意味も持たないまま死へ向かっていたのに、その瞬間、とても尊く意味のあるものに思えたんだ。僕の世界を作ってくれた人の一番求める願いを僕が叶えてあげられるなんて、こんなに素敵な事は無いなって思ったよ」
「僕が産まれてきたのはきっと、彼女を人間にしてあげる為だったんだ」と、愛おしげに語る、彼の口調。至福の時を過ごしているかのような、その表情。
ーーその時、アラタさんは救われた。
彼女に出会って、世界が広がって、彼女の為に命を使えて、アラタさんは救われた。
人間のアラタさんの命は、人生は、彼女のおかげで意味を得た。
…そうか、そういう事か。
「…生きる意味を求めるのが、人間です」
「そうだね」
「だからアラタさんの言ってる意味、私にも分かります」
一番辛いのは、意味の無い命を生きる事。意味を見出せず、未来が見えず、前を向けない事。
だって、生きる事は前を向く事だから。
「私も今、大事な意味の為に生きてます。それが無かったらここには居ません」
だから分かる。アラタさんが感じた気持ちも、その過去に、彼女に執着するその意味も。