死神のお仕事


「カズサさんの死を、待ってるんですね」


私の言葉にアラタさんは、ハッと驚いた表情を浮かべる。


「うん…そっか、そう言う事になるね」


独り言のようにそう呟いて、納得したような様子で、私に微笑みかけた。


「その為に生きてるんだもんね」


アラタさんの言うそれは、穏やかな微笑みとはまるで正反対の場所にある言葉なのだ。その為に生きているという事は、彼にしてみればその時に終わるつもりだという事を示唆した言葉。

その時がアラタさんの終わる日。それが彼の、生きた意味。

意味のある、やりきった彼の理想の死の瞬間。


「…分かりました」


それをきちんと理解した。私には分からなかった答え。知らなかったその世界。価値観に、思考回路。


「ありがとうございます、アラタさん」


私が死神とは、アラタさんとは、の部分を心に刻んだ、瞬間だった。


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