死神のお仕事


他にまだ寄る所があるから、という事で、アラタさんとは来た時に使った公園のトイレの前で別れる事になった。

「私でよければ手伝います!」と、申し出をしてみたものの、「もう遅くなるしサエキさんも心配するから良いよ」と。「時間貰っちゃってごめんね」と。そして、


「僕の事、知りたいと思ってくれてありがとう」


と、感謝まで述べてくれる。


「…こちらこそ、教えて頂けて本当に…本当に、嬉しかったです…」


ただの私の我が儘だったのに。私が私の為に知りたかっただけなのに。それなのに、アラタさんはこんな風に言ってくれる。アラタさんはどこまでも穏やかで優しくてーー綺麗。

綺麗なんだ、心が。そして儚くて危ういのだ、その存在が。だからきっと私は彼に興味を持った。彼の言葉が気になって、彼の生き方が放っておけなくて、私も理解したくなると、死神としての自分を受け止められるようになって…

そう。全てはアラタさんのおかげ。アラタさんが私を前に向かせてくれた。


「アラタさん、ありがとうございました」


それは、私の心からの言葉。深々と頭を下げた私の態度に驚いたのだろうか、アラタさんは少し目を大きくさせて私を見つめて、頭を上げた私はその瞳と視線が交わる。

< 134 / 265 >

この作品をシェア

pagetop