死神のお仕事
おまえが回収したんだろ?と、聞かれてつい、返す答えを濁してしまった。思い出したのは、回収時の出来事。私の中の私ではない…なんというか、いつもと違う私の事。
あの時の私は完全に死神の意識に乗っ取られた訳でもなく、ちゃんと人間としての感覚も両立させた上で判断していた。
香りが分かる死神の部分と、味が分かる人間の部分を持つ私が食べてあげるべきだなんて、すっかりもう自分の味覚が無くなって人間としての食事が楽しめなくなった事も忘れて、中間の自分だからと、人間と死神の全てを受け入れた上で出した答えがそれだった。
“食べたい”
あの時の私はハッキリとそう思っていた。でもハッと我に帰った瞬間、いつもの私に戻っていた。
可笑しい。確かあの時アラタさんは、魅入られちゃいけないと言っていた。
魅入られる?私は、魅入られていたのだろうか。
「…サエキさん、私…何か変なんです」
「変?」
「はい。何か、その…魂が、その…」
「魅入られたか?」
「…え?」
「魂に、魅入られたのか?」
「そ…ど、どうしてそれを…」
ズバリ、言い当てられる。サエキさんとの会話の中ではよくある事だった。それだけ私が分かりやすいのか、それとも本当は現場を見ていたりしたのか…サエキさんはいつも私の一歩先を行っている気がする。