死神のお仕事


「あっ、いや、その、なんかちょっと可笑しかったというか、勘違いだったのかもしれません、あははっ。変ですよね、有り得ませんもんね、食べたくなるとか…」


そうだ、きっと勘違い。味覚が無いのを忘れるくらい夢中になっていたんだから、きっと色々混ざって分からなくなっていたんだ、きっとそう。だって私は人間で、私は魂が食べられなくて、だから期待させちゃって、魂を裏切って…結果、魂を認識出来るのに、美味しそうと思うのに、その気持ちに答えられない、残酷な私がそこに居た、訳で。


「あかりは今、死神の事どう思ってるんだ?」

「…え?」

「好きか嫌いか」

「や、好きかって言われても…まぁ、嫌いでは無いですけど…」

「じゃあ死神の自分は?」

「え…自分?」

「あぁ。死神の自分は好きか?」

「……」


死神の自分は好きか?と、聞かれると、なかなか難しい。好きか嫌いかで答えられるカテゴリーに、死神としての自分はまだ収まっていないように感じる。死神と、死神の自分は別ものだ。…でも、


「…ちゃんとした死神になりたい、とは思ってます」

「へぇ。なんで?」

「…私、アラタさんの事も何も分からなかったし、死神としてまだまだ何も出来ないけど、でも考え方とか、少しずつでも分かるようになってきた事があって、知る度毎回ハッとさせられる部分があったりして、もっと死神の事を知りたい自分が居て…」

「それだな」
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