死神のお仕事


そういえば、死神が人間の人生を羨ましがるって教えて貰ったけど…魂の交換って簡単に出来ちゃうのかな。…だとしたらちょっと怖いな。


「あの、サエキさん。魂の交換って誰でも出来るもんなんですか?」

「…何だよいきなり」

「あ、いや、だって気になって…」

「したい訳?」

「いっ、いえ!したい訳では…ただ、そんなに簡単に出来ちゃったら、気づいたら交換されちゃった、なんて事になりかねないなって…」


想像するだけでも怖いと思う。今まで普通に生きていたのに、ついうっかり死神が見えてしまったばっかりに、魂が狙われるようになってしまうなんて。というか、死神が見えなくても交換されてしまうかもしれない。知らないうちに取られてしまうかもしれない。


「バカだな。んな事簡単に出来たら世の中元人間、元死神だらけだろ」

「…そ、そうですね」

「だから普通の奴には交換出来ない。でもこっちに引きずり込む事は出来る、契約書書かせてな」

「へ?でもそれって何のメリットが…」

「さぁな。だけどそういう物好きが居るのも事実だ、死神にも人間にもな」


そう言って、表情に薄っすら嫌悪感を表すサエキさんは、どうやらその行いが好きではないらしい。そういえば契約書を悪用する奴がいるって、以前私が確認もせずにサインをした時に言っていた気がする。カズサさんと違って、自分が人間になる訳でもないのに人間を死神にして、一体何の意味があるのだろうか…さっぱり理解出来ない。

< 142 / 265 >

この作品をシェア

pagetop