死神のお仕事


無意識にポケットに手を入れて、いつも持ち歩いている私物のスマホを探ってみた。番号を見た所で違いが分かる訳では無いけれど、何となくスマホが頭に思い浮かぶと身体が反応したというか、手がそこに向かったというか…ほとんど癖のその行動のおかげで、気がついた。


…あれ?無い。


可笑しいなと、もう片方のポケットにも手を入れてみて…うん、やっぱり無い。え、なんで?落とした?…ん?


「あっ、そっか!今日走るから落とさ無いように鞄に入れてそのままだ!」


講義が長引いたから遅刻したらマズイと、猛ダッシュで大学からサエキさんちまでやって来たのだった。ツイてない自分を再確認したばかりだから、こんなシチュエーション、絶対落とすだろうと気を利かせて鞄に避難させたのだった。

…と、いう事は。鞄も持たずに出て来た今、私のスマホは絶対確実にサエキさんちに置き去りになっているという事で…うーんどうしよう…すごく悩む…

ここは取りに帰るべきか否か…早く回収した方が良いとは思うけど、ついこの間、改めて私がツイていない事が実証されたばかりである。何か起こった時の助けを呼べる手段が欲しい。

こうなるともう、出る時のサエキさんとの電話がどうとかいう会話は、私が電話をしなければならない事態を迎えるフラグとも言えなくもない気もしてくる。


「…うん。一回取りに帰ろう」


それでスマホを持ってもう一度来よう、そうしよう。

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