死神のお仕事


一度試してみないかと、彼は私を誘っているのだ。その全身に人を惑わす、魅惑的な色気を纏って。


…あぁきっと、本来死神はこういうものだったのだ。人を惑わしその魂を食らう、そんな存在だったのだと、私はそんなセナさんを前にして理解した。

セナさんはその本来持っているはずの本能が色濃く残っていて、その気が強い。だから私にこんなに反応を示しているのだ、きっとそういう事なのだ。

だったら敵う訳が無い…人間には、敵わない。

そして死神でもある私は、死神の中にある規律に人間として守られる事も無い。


生きた人間の魂を持つ死神の魂を食べた所で、セナさんは何一つ悪い事をした事にはならない。


「……」


全てを悟り、恐怖で声を出せなくなった私の様子を、反論が無い、肯定の意味だとセナさんは捉えたのだろう。

ジッと向けられた強い瞳。合わさった視線を逸らす事も出来無いまま、セナさんの顔が近づいてくるのをまるでスローモーションのようにゆっくりと感じていた。


あぁ…食べられちゃうんだ。


魔法にかかってしまったかのように固まって動か無い身体、せめてもの抵抗を示そうとグッと瞼を閉じた瞬間ーー


ーーセナさんと、唇が重なった。

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