死神のお仕事
「っ!」
つ、冷たい!
まず初めに思ったのはそんな事。他の感覚やら感情よりも先に私が感じたのは、その氷の様な冷たさだった。
驚きのあまり慌てて目を開けると、その時の至近距離にある彼の顔に、感じる唇の別の感覚に、今自分の身に起こっている出来事を一歩遅れながらも把握する。
え?きっ、キスしてる…⁈
「やっ、め…っ!」
何とか突き放そうと胸元を押して必死に抵抗したけれど、 逃すまいと伸びてきた手が頭の後ろに添えられて、グッと強く押し付けられてしまった。そんな動きに驚いているうちに彼のもう片方の手は私の腰へと回されていて、身を引き逃げる事すら不可能な状況になってしまう。
な、なんで?なんでセナさん、どうして?…どうしよう!
もう頭の中は大パニックだ。なんせ食べられてしまう物だとばかり思っていたから、まさかこんな事になるなんて…急にキスされるなんて、そんなの聞いてない、意味分かんない、理解出来ない!
ーーと、ぐるぐると頭の中で分からないこの状況に振り回されていた、その時だった。
あ…あれ?
クラリと、頭が重くなる。そしてすうっと冷えていく私の身体。まるで重ねられたセナさんの唇の冷たさが身体に染み渡っていく様な…でも可笑しい。そういえばセナさんの唇、なんだか冷たくない。