死神のお仕事


あり得ない、絶対無理、今すぐにだってサエキさんに助けを求めたいのに!…そう思った、はずだった。意味の分からない提案だって、そんなの誰が受け入れるんだって…でもそれなのに、その提案が、とても魅力的に感じて。


サエキさんの事を、教えてくれる。


サエキさんについて、私は何も知らない。私の関係する何かがあるようでも、それでも頑なにサエキさんは教えてくれない。サエキさんは私には教えようとしてくれないのだ。だからセナさん、この人の事も私は分からない。分からないままなぜか今、私はこんな事になっている。私は何も知らない。死神の世界の事だって、知らないまま私はこの世界に足を踏み入れている。


「知りたいよね?サエキさんの事。だから取り引きをしよう」

「……」

「大丈夫、貰うって言ってもほんの少しだよ。もう身体も動くようになってきてるはず」


…本当だ、腕に力が入る。まだ重いけど身体も自力で起こせるようになっている。


「あんたはこうやって魂をくれる、オレはその分あんたの質問に答える、ただそれだけ。どう?悪い話ではないと思うよ」

「……」


…でも、どうなんだろう。

自分にとって悪い話かそうじゃないかは、正直よく分からない。だってこっちは身を削ってるんだし、きっと良い事はしてないはず。ダメな事だから禁止になってるはずなのだから。ただ私が例外なだけで、もしただの人間だったら許されていない行為なのに、それを続ける事って本当に…

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