死神のお仕事


サエキさんの秘密…

それはきっと、知らなくても良い事。何不自由無く今まで通りにサエキさんの仕事を手伝って、変わらず大学にも通えて、そのまま社会人になって家庭を築いて…死ぬまで、生きる。

いつか必ずやってくるその時までしっかり生き抜く事が、それまでの私の意味 と、私に命をくれた母の死の意味。

私が私らしく、しっかり前を向いて生きる事が…


「…前を向いて、生きる」


サエキさんの元で働いている事だって決して間違っている訳では無いし、それが無かったら私は今ここにすら居ない。

でも…


「私は何も知らない。私は与えられた環境の中で与えられた仕事をこなしているだけだ…」


目の前にあるはずのものがまったく見えない、見えていない。サエキさんが特別な意味も分からなければ、なんでサエキさんが私をここに置いているのかも分からない。サエキさんの言った賭けが何なのかだって。それにセナさん、あの人が一体何なのかも。

不思議だなと思う。彼はサエキさんに正面から逆らう事をしておきながら、サエキさんの事を恐れてる…というか、警戒している、みたいな所もあって…アラタさんとはまったく違う。きっと違う立場の人。

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