死神のお仕事


魔法かぁ…確かに、その通りかもしれない。

実際にお医者さんからそんな事を言われたら、あの時の出来事も夢だとは思えなかった。そんな奇跡的な復活を遂げていたなんて、本当に私はあの時死にかけていたらしい。


でも…だとしたら、それこそ可笑しな事になる。

だって今の所、私自身何とも無いのだ。


『死神になる』


確かにあの時そう言われた。だから覚悟して頷いて、もう目覚めたら人間ではなくなっているはずだと、心の準備をしていたのに…そういえば、あれは何処だったのだろう。

出来ればもう一度会って話がしたいけれど、何処に行けば会えるのかな。分からない事ばかりだし聞いてみないと…でも、あの人は一体…


するとふと脳裏に浮かんだ、あの時の黒。

思い出した身体が、反射的にゾクリとする。


あの人は、見た目も何も人間と同じだった。話す言葉も、声も、話し方も、動きだって…でもその瞳だけは、今思い出してもやっぱり人間のものとは思えなかった。

見かけは同じ。瞳だってそれは同じだけど…なんだろう。

奥が見えない、とでもいうのかな。

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