死神のお仕事


「多分、お腹が空いちゃったんだと思うんですけど、やっぱりまだ食べられなくて…逃げ帰ってきてしまいました…すいません」


セナさんの事を信用した訳では無いし、もちろん魂を食べられる事が気持ち良かった訳でも無い。でも、今は分から無かったから。

何が、誰が正しいのか分からない。自分のこの生き方だって…だから可能性は残しておきたかった。だから今はサエキさんには言えなかった。


「また点滴打って貰ったら行ってきますね。だからその…申し訳ないのですが、アラタさんを呼んで頂けたらなと…」


正直完璧だと思った。この言い訳は完璧で、疑う要素なんてこれっぽっちも無いと思った。現にお腹が空いて体調が悪くなっているのは本当だし、セナさんがここにいた事に触れ無い限り、何の違和感も無い流れだと思うから。

…でも、なんでだろう。

サエキさんの目付きが鋭くなる。


「……嘘、ついてるな?」

「…え?」

「セナに会っただろう」

「!」


そう指摘するとサエキさんはソファの空いたスペースまでやってくると、私と向き合うように片足をソファに乗り上げるような体勢で腰を下ろした。

…ジッと向けられる視線が痛い。

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