死神のお仕事
「…会ってませんよ」
私は、その視線から逃れるように顔を背ける。
「戻った時には誰も居ませんでした、本当です」
すると私のその返答に、「あれ?」と、何故か愉快げに声が聞こえて来て…何か、可笑しかっただろうか。
「俺、別にここで会ったのかなんて一言も聞いてないけど?」
「…! あ、えっと…っ」
マズイ!と、思わず背けた顔をサエキさんへと戻すと、笑顔を作るサエキさんの表情が目に入った。…でも、彼は笑っていない。
「俺に嘘つくんだな?」
笑顔のままなのに、笑っていない。目が違う。睨みつけてくるその目が怖い。鋭く重いそれは…怒り。
サエキさんは、怒っている。
「良い度胸だな、おまえ」
身を乗り出してくるサエキさんから離れようとするも、身体がまだ重く、上手く動かせない。
覆いかぶさるようにサエキさんの身体に影を落とされる。伸びてきた手が私の顎をグイッと持ち上げる。
「立場、分かってんの?」
貫くように冷たく言い放されたそれは、私の心に深く突き刺さった。
立場が、分かってるかって…?
「…なんで、そんな事を言うんですか?」