死神のお仕事
これは私の知ってるサエキさんの、奥底から這い出てきた何か。私が意図せず引っ張り出してしまった何か。それが今、私を抱きしめている。この人は誰?何でこんな事に?もう訳が分からない。
「おまえはおまえでいて欲しいから、好きなようにさせたい。それがきっと、一番良い」
その言葉に込められている情は、一体どんなもの?
サエキさんの腕の中でじんわりと温かさが広がり、染み込んでくるような心地が先程の冷え切っていた身体を思い出させる。熱と共に奪われた何かを埋めるように流れ込んでくる温かさが、急な眠気を誘いだしーー…
…ーー気がつくと私は、自分の家のベッドの上にいた。
その日を境に、サエキさんは私の前から姿を消した。