死神のお仕事
今、この状況になってやっと気づいた。あの時のサエキさんの言葉一つ一つ、私は本当の意味で全て理解出来ていないんだ。私が可笑しいとか、サエキさんが間違ってるとか、きっとそういう事じゃない。これはきっと、人間と死神の価値観の違い。思考回路の違い。生物としての違いから来るものだ。
だって、本当に大切に思ってくれてたならこんな風に見捨てたりしない。人間なら絶対にしない。俺の心だ、なんて言葉も、大切なものだという意味では無かったのだ。じゃあどんな意味?といわれても他の意味が何も思い浮かばない。さっぱり分からない。
サエキさんが分からない。信じられない。
…きっと信じなくて良かったんだ、こんな事になるんだから。
夜になり、ベッドに横たわって目を閉じる。瞼の裏に浮かぶのは、あの時の暗い瞳に映った感情。ドロドロと混ぜ合わさり、粘着質持って私へ向けられたあれらはもう、サエキさんにとってどうでも良いものなのだろうか。そういえば最近、なんだか身体が重い。きっとまた足りなくなってきてるんだろうと思うけど…どうすれば良いんだろう。
きっともうサエキさんは助けてくれない。