死神のお仕事

私はなんて勝手なんだろう。来てくれて嬉しい。また会えて嬉しい。忘れられてなくて嬉しい。

でも、来て貰えなきゃ生きてすらいけない。これだけのために来て貰わないといけない。

私は何なんだろう。私の存在って何なんだろう。


「あかりちゃんは何も気にしなくて良いよ」


背中を摩ってくれるアラタさんは、何も言わない私の涙がおさまるまで、ずっと付き合ってくれた。その優しさが沁みて、自分が情けなくて堪らなくて、もうどうすれば良いのかわからなかった。

それを察してか、ベッドに横たわった私の隣で、持ってきてくれた点滴に必要な道具を用意したアラタさんは、私に安静にして、眠っていいよと、目を閉じる様促す。


「寝てる間に終わって、朝には元気になってるよ」


それはつまり、目を覚ましたらもうアラタさんは居なくなっていて、いつも通りの朝が来るという事。

何の不安も無い、いつも通りの、人間としての世界の朝が。


…それが一番の、はずなのに。

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