死神のお仕事
「…サエキさんに頼まれたんですか?」
「そうだよ」
「…私、もう何もやってなくて、サエキさんの家に、入れなくて…」
死神の世界から完全に切り離される事がすごく寂しくて、何とか繋ぎ止めようと口が動き出す。
ここで寝てしまったら、もう会えない。そんな気がした。アラタさんの礼儀として、勝手に事が進んで混乱させないように、状況が分かるように声を掛けてくれたけれど、二度目は無い、そう思った。きっと今後はもう、こうやって声を掛ける事も無く、寝ている間に全て終わらせて帰っていくのだろう。
それがアラタさんの配慮であり、優しさであり、サエキさんの指示…だろうと、思う。
「こっちの事は気にしないでいいよ、あかりちゃんはあかりちゃんらしく、やりたいようにやれば良いんだよ」
だからやっぱり、こんな返事が来る。
「サエキさんからもう見捨てられたと思ってました」
「そんな訳ないよ」
「でも私、もうお仕事もしてないし、こうやってやって貰ってばかりなんて、」
「何も気にしないでいいよ。それがサエキさんの望みだから」
「そのサエキさんの望みがよく分からない」
「分からなくて良いよ。あかりちゃんはここで今まで通りに生きていけば、それだけで良いんだから」