死神のお仕事
「教えるよ」
「なんでも?」
「オレの知ってる事なら、なんでも。貰うものは貰うけどね」
「…全部はあげられません。死んでしまうので」
「死んでしまうね。加減出来ると思う?」
「……」
私の不安を煽りながら、楽しそうに、ニタニタと笑うセナさん。
「でももうオレしか頼れる人いないもんね?可哀想に」
なんて言いながら、心の中で舌舐めずりしているのを隠す気もない態度。さぁ、どうする?と、挑発的に私を見つめている。このまますんなり頷いてしまって、いいのだろうか。
得体の知れないこの人と取り引きする為の材料が、私にはこの身一つしかない。私を囲む世界から飛び出すには、大きな犠牲を払わなければならない。それは分かりきっていた事。でもいざその立場になると、急に足が震え出す。現実が、目の前に横たわっている。
「…あの人、きっと今も見てるよ。あんたが震えてるのを見て、どんな気持ちでいるんだろうね」
慰めるようによしよしと私を撫でるセナさんが、屈んで私を覗き込んだ。至近距離でセナさんの視線が、私を縫い付けるように突き刺さる。