死神のお仕事

「あんたが何を選ぶのか、興味があるんだよ。だから自由に泳がせて、失敗したら手を貸して、また突き放す。面倒になるギリギリの所で、あんたは上手い事踊らされてる」


彼の言っている事全てが私にとって重みのあるものだったから、言葉が胸に溜まって、身体が重い。頭の芯が、重い。ふつふつと湧き上がる何かに、どこか焦燥感をかられて、なんとかしたい気持ちが強くなる。


「あの人を見返してやろう。オレが手伝ってあげる」


甘ったるい声に乗せたその誘いはきっと罠。魂を手に入れる為の死神からの誘惑。分かっている。分かっているけど、


「…お願いします」


私は、頷いた。頷くしか無かった。リスクを負わずに成果は出ない。私を突き放すあの人を見返すには、もうこの方法しかない。


ニタリと口角を上げたセナさんを前に、もう足の震えは止まった。


決めた、やるしかない。


「約束ね。…破るなよ?」


低く念をおすように告げられるそれにも、臆する事は無かった。覚悟は決めた、後は突き進むだけ。前を向け、それが生きる事。

それが私の生き方だと今、思い出したのだ。


セナさんが手を差し出して、私はその手を取った。


「ついてきて。会わせる人がいる」


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