死神のお仕事

焦りからとりあえず急げと口にしてみると、何も知らないと思っていたはずが案外知ってる事があって、何も知らないからこそ、何を知らないのか、知らない部分をどう尋ねていいのか分からなくて、なんだか思っていたのと違う状況に陥る。


様子のおかしい私に、セナさんはとりあえず鷲掴みにしていた手を外してくれた。そうだ、セナさん。セナさんにしか聞けない事を聞こう。


「…セナさんとサエキさんの関係は?」

「んー、仕事振ってくる方と振られる方」

「…仕事仲間という事ですか?」

「仲間?それだと死神全部仲間になるね」

「……」


それは思っていた答えではない。なんだか上手く質問が出来ない。知りたい事はあるはずなのに、そこまで辿り着く道筋が思い付かない。


「他は?もういい?」


まずい。このままでは大した結果も得られてないのに、魂だけ取られる事になる。ちゃんと考えてから話出さなきゃダメだった!えっと、えっと…


「さ、サエキさんは、私の事どう思ってると思いますか?」

「知らない。本人に聞けば?」


即答である。でも本当にそうだ、その通り。本人に聞くしか無い話。…でも今、この質問に辿り着いた事で、私の中では微かな手応えがあった。

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