死神のお仕事
自分の為の選択
「おまえは本当に…っ、なんですぐこうなるんだ!」
玄関に着くなり荒く靴を脱ぎ捨てて、リビングに入るや否やサエキさんは声を荒げた。こんなサエキさんは初めてだった。
彼は今、本気で怒っている。
「なんで俺の話を聞かない!なんですぐ目の届かない所に行く!なんですぐ死にそうになる!」
唐突に目の前で吐き出される彼の怒りを、私は静かに受け止めていた。頭の中はとても冷静で、ただただサエキさんの言葉、仕草、感情の全てを受け入れていく。
「おまえが分からない。もう好きにすればいいのに、なんでわざわざっ、おまえが消えたら俺は、俺は…っ」
髪を掻きむしる様に両手を頭へ持っていくと、サエキさんは項垂れ、崩れ落ちるように膝をつく。
「俺は、何がしたいんだろう…」
消えいるような、掠れた声が耳に入って、私の中に染み込んでいった。