死神のお仕事
その弱々しい言葉は、目の前の両手で頭を抱えて塞ぎ込んだ彼の必死な叫びに聞こえた。
いつも全てを見せてくれない彼の、きっと一番繊細で柔らかい部分。それを人は、
「心」
「…は?」
「それが、サエキさんの心の声」
そう呼ぶのだろう。サエキさんの、サエキさんだけの心の声が今、溢れ出したのだ。
サエキさんの前に同じように座り込む。彼と同じ目線で話したいと思った。すると私の意図を汲んだのか、顔を上げたサエキさんは鼻で笑って、「死神に心なんて無い」と、私の言葉への返事を吐き捨てるようにする。
「合理的にしか物事を考えない。判断基準がそれしかない」
「それなのに、何がしたいのか分からなくなったんですか?」
「…おまえが絡むといつも上手くいかない」
「じゃあ、どうしたら上手くいきますか?」
ジッと見詰めて問う。私が絡むと上手くいかないという事は、つまりサエキさんの中で上手くいく方法の答えは出ているけれど、私が邪魔しているという事、そういう風に私には受け取れた。だったら、教えて貰うしかない。私は協力する。サエキさんのしたい事に。