死神のお仕事

そして、私の人生に幕を閉じよう。どうせ死ぬはずだったのだ、良い経験をさせて貰った。それに、死んだ後どうなるかも分かった今、正直死が怖くない。そんなつもりは無かったけれど、もしサエキさんの力になって亡くなるのなら、それは素敵な事な気がする。サエキさんに貰った力を返して、サエキさんの為にもなれるならきっとそれは、とても素晴らしい死ーー


「…おまえも死を選ぶのか?」

「…え?」

「おまえは、あいつの分まで生きたかったんじゃなかったのか」

「……」


あいつの分、と言われて、ハッと我に帰った。そんなつもりじゃなかったどころじゃない。こんな大事な事を、なんで今の今まで忘れていたのだろう。

私は生きなきゃいけないって、その覚悟で魂を貰って、今日までやってきた。

人間でも死神でも無くたって、私は私の人生を、お母さんの言葉を支えに生きていこうって…


「生きる事は前を向く事。おまえは今、どこを向いてる?」


ーー素晴らしい死、だなんて。その考えはまるで死神。私ではない、ただの死神。

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