死神のお仕事
「私は今、生きようとしていない…」
そんな自分に驚いて、言葉を失った。まさか私が、という気持ちで一杯だった。私が一番大切にしていたものが、いとも簡単に崩れ去る。今私は私の命を生きようとしていなかった。一番大切にしてきたものを蔑ろにした。
死ぬ事がこんなにも希望に満ちたのは初めてで、それは私が死神に近付いた紛れもない事実を裏付けていた。私はもう、人間よりも死神に近い存在になってしまった。いつの間にか遠くまできてしまった、いつも私はそこに居たのに。そんな、途方も無い気持ちを抱いた所で、もう後戻りは出来ない。
途方に暮れる私へ、それは唐突に告げられる。
「俺は、おまえの母親の部下だったんだよ」
「…え?」
サエキさんの言葉。サエキさんと私の母の過去の話だった。
「おまえの母親は、実質二人居る。おまえを産んだ親と、育てた親。育てたのが、先代の管理を担当していた、おまえを庇って死んだ母親…あの人はおまえが死ぬのを知ってて、生かす為に生きた死神だった」