死神のお仕事
高校時代も何回か泊まりに行っていて、一人暮らし始めてからも度々美緒の家にはお世話になっている。だから美緒の家の、特に煮込みハンバーグの味はちゃんと思い出せるんだけど…
美味しそう、だけど食べたくない。
…これもまたその部類に入ってしまっているみたいで。なんでだろう、あんまりだ。
「そうだ!あたしが作りに行ってあげようか?」
「…うん、遠慮しとく」
…美緒の料理には今の味覚をもってしても太刀打ち出来るかどうか…お母さんはあんなに上手なのに、なんでだろう。これもまたあんまりだと思う。
兎にも角にも、この味覚は普通じゃないぞと、退院後も経過観察で通院しているのでお医者さんにその事を打ち明けてみた。何を食べても味がしないし、お腹が一杯にならないんです、と。
そこで色々診て貰ったけれど、返ってきたのは身体的には特に異常はありません、の結果。
精神的なものじゃないかな、なんて言われたらもう…そうなのかなと思うしかない。だって身体はどこも可笑しく無いし、ご飯だって食べられない訳では無い。
…でも、だとしたら一体、この不調は何なのだろう。