死神のお仕事
その場の全員が本気で言ってる?そんな事をする意図は?と、キリヤさんを訝しむのが手に取るように分かる雰囲気の中、キリヤさんは至って真面目であると興奮気味に説明を始める。
「勿論、ボクの魂全部では無く、貰う分だけ渡すという事です。つまりあかりさんの中にはボクの死神の魂と、あかりさんの人間の魂が入ります。そしてボクの中にはボクとサエキ君の魂が入る」
「死神の魂同士は共存しない」
「本当に?」
「過去に上手くいった事例は無い」
「そう。過去に共存の意志をもって同じ身体に二つの魂を持った死神は居ないはずです。でもボクは二つを共存させてみたい。あかりさんを見て、もしかしたら出来るのでは?と思い至りました。あかりさんが羨ましかった。でもボクの中にもサエキ君の魂が入ったら?それはなんて素晴らしい事だろうと!」
「……」
「そしてサエキ君の一番大切な物の中にはボクの魂が入っている…ボクにとってこれ以上の解は無い」
「……」
驚きに、私は言葉を失った。キリヤさんがサエキさんの事を好きだとは聞いていたけれど、まさかこんなに狂気じみたものだとは思わなかった…いや、もしかしたら死神の好きという感情の行方は、結局ここに辿り着くのだろうか。
私にはまだ分からない死神の思考回路。執着がドロドロと覆うそれは、私の知ってる好きとは違う。