死神のお仕事

生まれついてずっと抱いて来た価値観。生きてきた私の世界。どんなに割り切ろうとしても割り切れないものがあるのだと、ハッキリ自覚した。だから私は、人間として生きる事を宣言したのだ。


「…でも、こうやって生きていられるのは死神さんのおかげです。勿論身体の事とか契約の事もあるけど、私がそうやって働く事で恩返しになるならとも思ってます。だからその…今までのように人間として生きながら死神のお仕事もお手伝い出来たらなと、そう思うのですが…」


「それでも、いいですか？」と、恐る恐る様子を窺いながら尋ねてみた。

ハッキリと人間として生きると、先程断言したばかりなのに、本当はそれしか出来ないと分かっているくせに、それでも許しが欲しいと思ってしまう。自信が無い分、受け入れて欲しいと願ってしまう。


死神さんは、私の問いに小さく溜息をついた。それはなんだか呆れているような、そんな溜息だった。怒って…しまっただろうか。


「えっと…死神さん？」

「あのなぁ、さっき言っただろ？良いんじゃないかって。その時他に俺は何て言った？」

「他？他は…え、Mなのかって」

「お、それで覚えてたか。おまえ自身マゾの心当たりあり？」

「へ⁈ い、いやそんな事は…って！だから何なんですか？」

「ははっ、だから、どっちかに割り切った方が楽なのに辛い道を選ぶんだなって事だ」

「…辛い道？」