死神のお仕事
越えられない壁
カタカタカタカターー…カチッ
高層マンションの一室で忙しくキーボードやらマウスやらを弄りながら、パソコンとにらめっこを続ける私。
「あ、サエキさん。別の地域でも不足が出たんですけど、少しなんで一緒にリストアップしても、」
「別にしろ。今日中に終わらせてこっちにリスト寄越せよ」
「…はい」
今日中にって、このあいだ教えて貰ったばかりなのに無茶が過ぎる気がする。
でもそこで文句を言う事もノーを突きつける事も出来ない私は再度カタカタ打ち込みモードに切り替えて…はぁ。まさか死神の仕事がこんな事務作業だったなんて。
倒れた時に連れて来られた場所、そこは普通に私達人間が住むように建てられたマンションの一室だった事がその日の帰りに判明した。
どうやらそこはサエキさんの家であり、私が通う職場でもあるとの事なんだけど…こんなお金持ちしか住んでなさそうな高層マンション。どうやって借りてるんだろう、収入源は?
…なんて思ったら全部表情に出ていたらしく、死神は仕事で必要なものならなんでも手に入るようになっているーーつまり必要ならばお金でもマンションでもいくらでも用意出来る、なんていう驚愕な事実を当たり前の顔をしたサエキさんから教えて貰った。