死神のお仕事


「そろそろ腹も空いてくる頃だろうしな」そう呟いたサエキさんの言葉に私はギクリとした。なんで分かるんだろう、確かに最近少しずつまた身体が怠くなってきている。


「またぶっ倒れられたら困るからな。準備しとけよ」

「…準備?」


何の?と聞くまでも無く、「心の」と答えを提示され、私は無意識にゴクリと唾を飲んだ。


明日食べるぞと。

その心の準備をしとけよと。


「…はい」


カラカラしてきた喉に冷蔵庫に沢山あったミネラルウォーターを通らせてみたけど、思ったより潤わ無かった。

これが緊張感からなのか半分死神だからなのかは私には判断がつかなかったけれど、隣で同じようにミネラルウォーターのペットボトルの蓋を開けるサエキさんが居るから、きっと水は死神も飲むものなのだろう。だからきっと冷蔵庫にいっぱい入ってるんだと思う。

うん。味覚が無いとは言ってたけれど、食べ物から栄養補給は出来ないとも言っていたけれど、水分が必要無いとは言って無いし。


元々味の無い飲み物だ。きっとこの感覚は人間のままなのだと思ったら、少し気持ちが楽になった。よし、魂食べた後いざとなったら水を飲もう、ガブガブ飲もう。

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