死神のお仕事


ーーそしてそれは、大学で講義を終えたタイミングだった。


正にチャイムが鳴り終えた瞬間に狙いを定めたかのごとく、震えだした私のスマートフォンは、必死に誰かからの着信を私に知らせてくる。

だから出ようと確認した画面に表示されてるのは、知らない番号である。誰だろう…出るのが怖い。


という事で、向こうが諦めるのを待ってみた。けれど、これがまたなかなかしぶとい。一向に切れる気配を見せない。


間違いだって、間違いだよきっと。出ないって諦めようよ。でもこの粘り強さ、向こうは間違えてると思ってないんだろうなぁ…思い切って教えた方がいいのかな。でも教えた所で上目線で怒られたりしたら嫌な気持ちになるし…ん?上目線?


ーーそこでもしやと思いついた相手が、約一名。


「……もっ、もしも、」

「遅ぇよ。どんだけ待たすんだ」


恐る恐る出た瞬間に、間髪入れずに返ってきた声は電話越しでも溢れ出んばかりの苛立ちを含んでいて、慌ててというかもう、無意識に、「すみません!」と謝っていた。もちろん電話越しでもお辞儀付きの生粋ジャパニーズスタイルでだ。

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