死神のお仕事
元人間の、死神?
聞こえてきたその言葉に、私はすごく興味を惹かれた。
だってそれは私以外にも人間の感覚を持った死神が居るという事だ。人間の記憶を持ちつつ、人間の常識に思考が縛られつつ、それでも死神として生きてる人がこの世の中に居るという事だ。
その人も私と同じように、同じ悩みを抱えながら生きてるのかもしれない。
すると、私のそんな気持ちは表情に出ていたのだろう。「そんなに期待しない方が良いぞ」と、サエキさんは忠告するように言った。
「基本人間捨てた奴しか居ないから、おまえが思ってんのとは根本的に違うと思う」
「え?…人間を捨てるって?」
それはつまり、人間よりも死神として生きる事を望んだという事なのだろうか。
もし死神になりたいと望めば誰でもなれると、そういう事なのだろうか。
…きっとサエキさんはそんな私の抱いた疑問も分かってる。それとその答えも。
でも、それでも「それはまた今度」と、この話題を強制的に終わりにさせた。今は目の前の魂の事に集中しろよと。
「これからもっと濃くなるぞ。キツかったら少し離れてろ」