死神のお仕事
そう言って端末の反応を窺いながらサエキさんは家の奥へと足を進めて行ったので、残念だったけど私も黙ってついて歩き始めた。…こればっかりは仕方ない事だ。
するとサエキさんの言ってた通り、奥へ奥へと進む度にさっきまでの感じがどんどん濃く、強くなっていく。
肌に纏わり付くような空気。気持ち悪くなりそうな程香る気配がこっちだよ、こっちだよと私の事を誘ってる気がして、早く行かなきゃと急く気持ちも私の中で生まれ始めている。
「この部屋だ」
ピタリと足を止めたサエキさんの前には、閉じられた障子戸。
もう古くなって黄ばんでしまっているそれは所々開いた穴を修復したような跡があって、そこから漂う生活感がかつてここに住んでいた人間の存在を主張していた。
…怖い。
この先にあるという魂の元の姿を想像してしまったら、急に恐怖感が倍増した。そうだ、それは元々人間。そしてもう、死んだ人間。
「開けるぞ」と呟いたサエキさんは、きっと私への配慮として一応教えてくれたんだと思う。有難い。有難い…と思うけど、欲を言うなら良いか?っていう確認も欲しかった。心の準備がもう少しだけしたかった。
だってその先にあるそれは、あまりにも衝撃的だった。