死神のお仕事
元人間の死神
つうっと伝う汗を拭う余裕すら、私には無かった。
足が一歩、また一歩と徐々に後ろへと下がって行く。
「む、りで、す」
弱々しいというか、芯が無い。出てきたのは一つ一つの平仮名を口にしただけのそんな声だった。
「なんで?」
「な、んでって…」
「美味そうとは思ってんだろ?」
“美味しそう”
ドクンと、大きく暴れまわっていた心臓が一度、返事を返した。そうだそうだ、その通りだと、私の中のもう一つの部分は歓喜している。欠乏している分をやっと補えるのだと、これが欲しかったのだと。
これしか欲しく無いのだと。
ーーだから、
「いっ…嫌だ」
“気持ち悪い”