死神のお仕事


「欲しく無い、そんなの、食べ無い、食べたく無い、食べられ無い」


そう言って目を逸らすのは人間の私。これは人間の感情。元々持っていた当たり前だった感覚。これしか無かった。これしか考えられなかった。それなのに、


手が、伸びる。


後ろに下がった分離れた距離を取り戻そうとするかのように、私の中の私じゃ無い部分が私を動かしている。


“これが欲しい、食べたい”


心が返事をしている。


…心?


死神に半分取られたのは心なのだろうか、それとも身体なのだろうか。

食べなきゃ生きていけ無い私の身体も、こんな風に感じている私の心も、どっちもそっち側なのだとしたら。

私の中の人間の部分は一体どれくらい残っているのだろう。


「……気持ち悪い」


ーー私。

半分ずつの身体に半分ずつの心。でも私が生きていく為に必要なのは、今思わず手が伸びるくらい欲してるのは、どんどん濃くなってるようにも思えてしまうそれは、



死神の、私ーー

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