死神のお仕事
パニックになった私、興奮している私、泣きじゃくる私、言葉も上手く紡げない私。だけど、
「おまえは人間だ。俺達とは違うなら、無理だと思う事も可笑しくない。どっちもおまえだってちゃんと分かってるから」
私の気持ちをこの死神は、分かってくれた。言葉にしてくれた。
「…だから、もう泣なくな」
淡々告げたその声がなんだかとても優しく感じて、私はそっと顔を上げた。
目の前には膝をつく私に合わせるようにしゃがんでこちらを見つめるサエキさんの姿。ジッと私を見つめるサエキさんの瞳。
「ふっ、すげぇ顔」
なんて可笑しそうに笑う彼の瞳はやっぱりあの時と変わらなかった。暗く、黒く、深い。でも…あの時よりも怖さを感じ無かった。だって、こんなにも優しく、穏やか。
それはまるで、深い海。
静かな海の底。
「帰るか」
そして私の手を引く彼の手は、とても温かかった。