死神のお仕事
「…私、食べなきゃって思ってたんです」
「あぁ」
「死神だって事ももう受け入れてるし、生きる為には必要な事だってちゃんと分かってます」
「あぁ」
「でもまさか、魂があんなだとは思わなくて…」
ーー端末を使って戻って来たサエキさんの家。ソファに座るとどっとやって来た疲労感に、私はどこか呆然としながら思いを口にした。食べられなかった事への罪悪感からか、口から出るのは言い訳ばかりだ。
「あんなって?」
「あんな、生々しい…人間の心臓みたいな」
「心臓?」
「はい…ドクドク動いてて、血に濡れたように光ってて…」
「牛やらなんやらの生肉と同じだろ?」
「ち、違いますっ、アレはなんか、もっと力があるというか…生きてる」
魂は生きてる。人間の身体という器が無くなっても魂は変わらず生きていた。身体が無くなった分貪欲にも感じる程の生命力を振りまいていた。
ここにいるよ、まだあるよって、こっちに来てって必死に訴えかけていた。きっとそれは次の命に繋ぐ為。死神に、回収して貰う為。